再起までの浪人時代 石焼イモ売り編その4



日々の焼き芋売りにも慣れてきたころのことです。
春になれば、ピタッと売れなくなるので冬場が焼きイモ売りの
稼ぎ時です。

12時〜1時のビジネス街は昼食にでてくるOLさんのおやつに買って
いかれる方が多いので、なかなかの繁盛をしました。

イモ好きのOLさん達も徐々に常連ができてきました。

そんなある日、いつものようにOLさんを相手に笑顔を振りまいて応対をしていた時、見覚えのある顔がこちらを見つめています。

井上ちゃうんか〜?」・・・って声をかけてきたのは、私が独立起業する前に勤めていた、ある有名な外資系保険会社の元同僚のF君でした。

彼とは、輸入インテリア会社を経営し始めて、まだ羽振りが良かったころまで時々連絡を取り合っては一緒に呑みに行った仲です。

続きを話す前に、私の起業する前の状況を少しお話します。

私は東京のある私立大を卒業後、そのまま残ってリクルートって会社に半年間だけ勤務しました。

その後、大阪に帰ることになり、帰郷後縁あって就職したのが当時まだ有名になり始めてたばかりのアメリカに本社のある外資系保険会社に幹部候補として入社したのです。

実力主義の社内で当初15人いた大學卒のメンバーも約2年半後には半分ほどしか残らず、その中で最初にチーフという役職を貰ったのが私とその元同僚のF君でした。

起業のため、その会社を辞めることになった時、当時の上司と一緒に私の家まできてくれて説得してくれたのも彼でした。・・・それはドライな外資系では珍しいことでした。

私の親もず〜と自営業ばかりしてきましたので、その苦労を知っており、息子は必ず安定したサラリーマンにすると子供時代から言い聞かされてきましたので、退社の旨を伝えたときには大反対されました。

「お前を東京の大学にまで行かせるのに幾ら金がかかったって思ってるのだ。それなのに会社を辞めるだと〜。」と怒られました。
彼と最後に会った時、すでにマネージャーに昇進しており、年収は30台前半で1500万円は超えていました

ベンツのワゴンを買ったばかりで、その車で琵琶湖にバス釣りによく行くとの話しをしていました。

さて、話しは戻ります。

井上ちゃうんか〜?」ってF君に声をかけられた時、私はビックリしたと言うよりも恥ずかしくて声が出なかったのです。

「あ〜。F君か〜!」って返事をするのがやっとでした。

でもお客さんの応対途中でしたので、お釣りを渡す列ができたままでした。

彼は事情を察したのか、「また連絡くれや!」って言ったきり、その場を離れていきました。

彼と一緒にいた部下らしき人が、「Fさん。あの人を知ってるんですか〜?ってところまで聞き取れました。

おそらく彼も焼き芋を売ってた男が、自分の元同僚で、自分と同じ幹部候補だったとはなかなか言えなかったものと思います。

約20分ほどお客さんの相手をした後、イモ焼き機付きの軽自動車を運転して次の場所に移動し始めたのですが、約5分も運転しない内に道端に車を止めました。

目に涙が溢れてきて運転が出来ない状況になってしまったのです。

惨めでした

彼は客観的に見ても、一流エリートビジネスマン。

私は反対を押し切って起業したものの、今では名も知られない焼き芋売りの男でしかなかったのです。

道を誤ったのでは・・・と言う疑問が心に去来しました。

あのままその会社にいれば、おそらくマネージャー、もしくはゼルラルマネージャーくらいまでにはなっていたかもしれません。

安定した高収入。 エリートビジネスマンとしての名誉。そして暖かい家庭。

得られたはずのすべてを捨ててまで起業した後の私の姿が、焼き芋売り屋です

今まで抑えていたすべての感情が崩壊するように、腹の底から涙が溢れてきて嗚咽が止まらなかったのです。

魂が、何かの叫び声を上げてるようでした

その日は、続けて仕事をする力が出ず家に帰りました。

さすがに再度立ち上がるまでその後、2日程の時間が要しました。

コメント
読みこんでしまいます。
また、拝見させて頂きます。
経験を語って頂き
ありがとうございます。
読んでいます。
  • 遥香☆やおしゃん
  • 2006/01/15 2:46 AM
約15年前会社を設立することになり、浮き沈みを経ながら今に至っております。最初から全て拝読させて頂きました。楽しみにしておりますので、これからも体験談をお聞かせ下さい。
最近更新頻度がはやくなりましたね(笑)

前回から続けて読んじゃいました!

社長の感じた惨めさと

焼き芋屋さんの素晴らしさを両方感じて

複雑です!

またコメントします!
私も現在同じような状況です
しびれます(つД`)・゚・。
  • 浪人
  • 2006/01/15 11:04 AM
初めて訪問しました。
最初から一気に読みました。
そして気づいてたら泣いてました。
どこどこで美味いものを食べたとか、有名人と写真を撮ったなど社長の自慢話が多いブログの中で、社長は本物です。感動を有難うござまいました。
  • 小雪
  • 2006/01/15 12:52 PM
井上社長、こんばんは。アップヒルの千葉と申します。先日はコメントをわざわざ頂戴しまして有難うございました。まだまだ未熟者ではございますが、どうぞ宜しくお願い致します。
こんにちは!
今回のお話は、ぐっと来ますね。
職業に貴賎は無いとはいえ、お辛いお気持ちは察することができます。
しかし、偶然とは恐ろしいものですね。
その後Fさんとどうなったのかも、ちょっと気になるところです。
益々、目が離せないですよぉ〜(^^;;
やはり、社長になるような人はサラリーマンの時から違っているんですね。
次号は、どんなたくましい立ち直り方をするのでしょうか(~_~)
いらっしゃいませ!
観じる日記の中村さん。
いつも「観じて」頂きありがとう御座いました。
今回のブログを書くのは辛かったですが、何とか書きあげました。よ!
いらっしゃいませ!やおしゃんさん。
一言コメント、有難う御座いました。
いらっしゃいませ!
こっこさん。
初登場ですね。御社のHPを見たら、当社の近くですね。
うちは本町ですよ。
これからも宜しくお願いします。
いらっしゃいませ!田舎っぺうどんさん。
最近、更新頻度が早くなってきたでしょう!
この調子で頑張ります・・・多分?(笑)
いらっしゃいませ!浪人さん。
浪人さんは浪人されてるのですね。
私も2浪しました。
でも長い人生で1〜3年の回り道も無駄ではありませんよ。頑張ってください。
いらっしゃいませ!小雪さん。
ステキなハンドルですね。
私が感動を与えたのですか?
本人はあまり感動を与えようって気では書いていないのですが、結果として与えれたなら良かったです。
いらっしゃいませ!アップヒル千葉さん。
千葉さんも初めてですね。
今回は初めてコメントを頂けた方が多くて嬉しいです。
今後も宜しくお願いします。
いらっしゃいませ!益田さん。
その後のFさんの動向ですね。
実は知ってるんですよ。
今度、お会いした時にこっそりお教えします。
いらっしゃいませ!英語師匠さん。
次号は、たくましくなってるのでしょうかね〜。
でも、楽しみにしておいてください。
初めまして
福岡で起業をブログに書いています。
私の50年の体験を元に書いていますが、井上社長の苦労のストーリーを私と重ねて読んでしまいました。
まだ全部は読破できていませんが、今日が最初でしたので、これからバックナンバーを読ませてもらいます。
これからも宜しくお願いします。
こんにちは、先日はコメントありがとうございました。
すぐに井上様の記事を拝見させていただき、コメントを書いたつもりだったのですが、送信せずに閉じていたようです。

本当に人生にはいろいろあるのですね。
この先自分の人生に何があるのか予測もつきませんが、どんな時もあきらめずに前向きに生きたいと思います。

いらっしゃいませ!ヒロシさん。
50年も起業さえてるとは凄いです。
ご自分の苦労といろいろ重ねられたことでしょう。
またいろいろご指導をお願いします。
おはようございます!
何かすごく泣ける話ですね?
久々に、自分もウルッと来ましたね。。。
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